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大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)4109号 判決

一 その方式及び趣旨により真正な公文書であると認める甲第七ないし第一〇号証並びに弁論の全趣旨によれば、請求の原因1、2の事実を認めることができる。

二 その方式及び趣旨により真正な公文書の写しであると認める甲第六号証、第一一ないし第一五号証並びに弁論の全趣旨によれば、請求の原因4の事実を認めることができる。

三 請求の原因5について

(一) 前掲甲第六、第一一ないし第一五号証によれば、被告が請求の原因4記載のかばん類販売行為により販売利益五〇万円をあげるとともに、同記載のかばん類製造行為により加工賃一五〇万円を得たことを認めることができる。

このうち販売利益五〇万円が商標法三八条一項により原告の被つた財産的損害の額と推定されることは疑いがない。

しかしながら、加工賃一五〇万円は、その中に製造原価とみるべき部分(労務の対価、工場・機械の使用料、電気代等)と製造利益とみるべき部分が含まれていると考えられるが、商標法三八条一項により原告の被つた財産的損害の額と推定されるべき被告の利益の額とは、後者のみを指すものと解すべきである。けだし、被告の侵害行為がなく原告が自らその分のかばん類を製造する場合にも製造原価の支払は要するからである。ところが、本件の場合、前記加工賃一五〇万円のうち製造利益とみるべき部分がいかほどかは、証拠上これを確定することができない。したがつて、被告が請求の原因4記載のかばん類製造行為によつて得た利益については、その立証がないことに帰する。

(二) 前項までの認定事実及び弁論の全趣旨によれば、被告の商標権侵害行為により原告がその信用を毀損され、右(一)の財産的損害以外に無形損害を被つたことを認めることができる。

しかしながら、右無形損害の額として原告が主張する一〇〇万円はやや多きに過ぎるものと考えられるのであつて、被告の侵害行為の期間・態様、侵害品の製造・販売数量、販売地域等からすれば、右無形損害の額としては二五万円が相当であると認められる。

(三) したがつて、被告の商標権侵害行為により原告の被つた損害として証拠上認められるものは、(一)の被告の得た販売利益相当の損害五〇万円及び(二)の信用毀損による無形損害二五万円の合計七五万円である。

四 以上認定の事実によれば、原告の本訴請求のうち商標法三六条、民法七〇九条に基づく請求は、商標権侵害行為の差止及び侵害物件の廃棄並びに損害賠償金七五万円及びこれに対する不法行為後の昭和六二年六月一七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

よつて、原告の右請求を右の限度で認容し、その余は理由がないから棄却し、不正競争防止法一条の二第一項に基づく請求も、損害額についての判断は右と同断となるから、右の限度を超えて金員の支払を求める部分は理由がないので棄却する。

〔編註その一〕 本件における事実関係は左のとおりである。

一 原告訴訟代理人は、

「一 被告は、別紙目録(一)、(二)記載の標章を付したかばん類及び袋物を譲渡し、又は譲渡のために展示してはならない。

二 被告は、前項記載のかばん類及び袋物を廃棄せよ。

三 被告は原告に対し、金三〇〇万円及びこれに対する昭和六二年六月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求め、請求の原因として次のとおり述べた。

1 原告は、かばん類、袋物等の製造、販売を業とするフランス法人である。

2 原告は、別紙目録(一)、(二)記載の各標章(以下「本件各標章という。)につき、それぞれ左の(一)、(二)記載の商標権(以下「本件各商標権」という。)を有している。

(一) 登録番号  第一三三二九七九号

出願日   昭和四八年三月一四日

登録日   昭和五三年五月一日

商品の区分 第二一類

指定商品  装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具

(二) 登録番号  第一四四六七七三号

出願日   昭和五一年一一月九日

登録日   昭和五五年一二月二五日

商品の区分 第二一類

指定商品  かばん類、その他本類に属する商品

3 本件各標章は、原告が製造、販売する商品の表示として、国際的に著名であり、遅くとも昭和五二年当初には日本において広く認識されるものとなつていた。

4 被告の商標権侵害行為及び不正競争行為

被告は、昭和五九年二月から同六〇年一〇月までの間に、本件各標章と同一の標章を使用し原告の商品に酷似したかばん類を訴外早崎某から委託を受けて加工製造し、また右かばん類を仕入れて他に販売し、もつて原告の本件各商標権を侵害するとともに、故意に原告の商品と混同を生じさせ、原告の営業上の利益を害したし、今後も同様の商標権侵害行為及び不正競争行為を行い、原告の営業上の利益を害する虞れがある。

5 原告の損害

原告は、被告の前記商標権侵害行為及び不正競争行為により、左の損害を被つた。

(一) 被告の得た利益相当の損害 二〇〇万円

被告は、前項記載の行為により、加工賃一五〇万円及び販売利益五〇万円の合計二〇〇万円を下らない利益をあげたから、商標法三八条一項又はその類推適用により、右利益の額が原告の被つた財産的損害の額と推定される。

(二) 信用毀損による無形損害 一〇〇万円

原告は、一八五四年に世界で最初の旅行かばん店としてパリに設立されて以来、極めて堅牢なフアツシヨン性に富む高級なかばん類、袋物類を販売し、名声を博してきた。原告が日本において販売する商品は、自らがフランスにおいて製造しその日本における子会社が輸入したもののみであり、これを子会社の直営店と特約店のみで販売して、品質の保持管理に努め、デザイン変更や安売りをしないことによつて、高級品のイメージを確保し、本件各標章の信用維持に努めてきた。しかるに、被告が前記のとおり原告商品の酷似的模倣商品である偽ルイ・ヴイトンかばんを製造、販売したことにより、原告はその信用を毀損された。原告は、被告の右信用毀損行為によつて、前記(一)の財産的損害以外に多大の無形損害を被つた。右無形損害の額は一〇〇万円を下らない。

(三) 合計 三〇〇万円

6 よつて、原告は被告に対し、商標法三六条、民法七〇九条に基づき、又は不正競争防止法一条一項一号、一条の二第一項に基づき、商標権侵害行為ないし不正競争行為の差止及び侵害物件の廃棄並びに損害賠償金三〇〇万円及びこれに対する不法行為後で訴状送達の日の翌日である昭和六二年六月一七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二 被告は、公示送達による呼出を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しない。

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